染料植物賦(12)

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「木通(アケビ)」

庭でアケビを見つけた時はちょっと期待に胸が膨らんだものです。(前にどこかで見たフェンスに絡んでいるアケビの花は地味ながら可愛かったし、実がなれば食べられるし、もしかしたら蔓でカゴを編むこともできるかもしれない。)

しかし実際には春になると地面からひょろひょろと寄るべなき風情で蔓を伸ばしはするものの、そのうち諦めたのか地を這ってボタンヅルやら他の雑草に紛れてしまいます。そんなことを毎年繰り返し、花が咲く気配などちっともありません。

  <地を這う木通>
   <やっと今年咲いた木通の花>

原っぱでの草むしりの時にO氏にそんな話しをしたら、蔓を何かに絡み付かせなければ花は咲かないと教えてくれたので、トレリスを設置して蔓を誘導してみたのですが、なかなか思い通りにはいきません。O氏からはもう一つ、料亭などでは春にアケビの新芽が出てくるとの情報も。

実がならないなら新芽を食べてやれと、まだ柔やわとした葉と蔓を摘んで湯掻いたところ、茹で汁が思いの外きれいな緑色になったのでこの汁で染めて見ることにしました。

実は植物の芽で染めるのはこれが初めてではありません。以前アスパラガスの茹で汁があまりにも緑なので、絹のスカーフをその茹で汁で染めてみたのですが、しっかりとした抹茶色に染まったのです。何か、これから成長するものの生命力が色を出しているような気がして、蕗の薹、コゴミ、蕨でも試してみました。コゴミ、蕨は残念ながら染料になる程には染まりませんでした。蕗の薹は意外や黄色に。考えてみたら花の蕾なのですから緑ではなく黄色に染まったのは驚くほどのことではないのかもしれません。爽やか系の黄色でこれは使えます。もちろん湯掻いた蕗の薹は蕗味噌にして美味しくいただきます。

さて、アケビの芽は如何に。絹とウールを明礬媒染と銅媒染で試してみたところ、明礬ではほとんど発色せず、銅媒染では草色に染まりました。染めるものの2倍ほどの重さが必要なので、あの細く柔らかい蔓と葉を調達するのはちょっとした根気が入りますが、結構沢山生えているので少量を染めるのでしたら何とかなりそうです。ただ、季節が深まるなかで、いつまであの爽やかな草色が出るのか。夏になれば葉はもう少し大きくなるので採取もしやすくなるでしょうが、もっと黄味を帯びてくるのではないかと予想されます。

季節や採取場所で色味が変わってしまうのが草木染めの難しいところでもあり面白いところでもあります。身近に沢山ある植物なので季節ごとの色の変化を楽しむことも草木染めの楽しみ方の一つではないかと思います。

ところでアケビのお浸しのお味は? クセがなく美味しいと言えば言えなくはないのですが・・・酒の当てにほんの一口、「お!春だねえ」・・・やはり「料亭の味」でしょうか。

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