染料植物賦(6) 「ユーカリ」

5+

ユーカリは日本には自生しない植物ですが、コアラの餌として栽培されたり近年はフラワーアレンジメントなどによく使われるようで、随分とポピュラーになってきました。この木の葉っぱで朱色が染まるということは知っていたのですが手に入れる術がなく、長年私にとっては幻の染料でした。というのも優に600種類はあるというユーカリの中でも赤く染まるのは限られており、それはコアラの餌でも花屋で売っているユーカリ・グニーでもないからです。私の知っている限りではシネリアとコラダータという種類のユーカリが赤く染まります。さてこのユーカリもウールでしか赤い色にはなりません。タスマニアでユーカリ染のワークショプをやってもらった時、ウールと絹と木綿の試染用布で染めたのですが赤く染まったのはウールだけ、絹と木綿はうっすら黄色っぽくなるだけでした。それでも赤い染料は貴重です。何とか手に入れたいものだとずっと思っていたのですが、一昨年朗報が。飯田のリンゴ園で働く知人からユーカリの栽培を始めるので希望の種類を教えてと言ってきたのです。そしてユーカリは飯田の地ですくすくと育ち、形が悪くて出荷できない枝葉が届けられました。早速試染したところ茜よりは彩度が落ちるものの赤みの強いレンガ色がしっかり染まりました。これは使える!栽培している知人と二人小躍り状態です。
そして去年、木綿がグレーに染まるというネット情報とともにさらに大量の枝葉が届きました。早速試染。鉄媒染で木綿とリネンが確かに綺麗なグレーに染まりました。ついでにウールで試してみたところこちらは少し紫みを帯びた茶色に。しまった、絹で試すのを忘れた!
ところで、日本ではさておき産地オーストラリアではユーカリ染めはいつからあったのでしょうか。イギリスの植物染の本には記載がありませんし、ネット検索をしても出てきません。昭和12年に発行された「染料植物譜」にEucalyptus corymbosaについて「・・・・又紅色染料に供する文献もあり」というなんとも歯痒い記述がありますが、結局それ以上のことはわかりませんでした。が、同時にユーカリはタンニンを多く含み、それを抽出して利用するということが書かれていました。そうだ、そう言えばタスマニアでは川にタンニンが多く含まれているので水の色が赤いと聞き、川のタンニンのせいで赤い染料になるのか、あるいは木の成分が溶け出して川にタンニンが多いのだろうかなどと考えたことを思い出しました。
なんで思いつかなかったのだろう、植物繊維にタンニンは結合しやすく、鉄で媒染すればグレーになることはほぼ間違い無いという事を。ユーカリ染めの歴史は解らなかったけれど、使える染料が増えたのが嬉しく、早速赤いマフラーを織るべく鋭意努力中。

ユーカリの葉

ユーカリで染めた綿と麻のの糸と羊毛

5+

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

You may use these HTML tags and attributes:

<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>