希望の牧場

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8年前の福島原発事故で、放射線被爆を受けた牛を今も300頭近く飼育している牧場主がいる。吉沢正巳さんで、東京農業大学を卒業して福島県南相馬市で肉牛を肥育していたが、3.11事故で近くの住民と一緒に一時避難した。その後牧場に帰り、仲間の牧場を含めて餓死した1200頭の牛と2000頭の殺処分された牛の無残な姿を目に焼き付けて来た牧場主である。隣接する浪江町は帰還困難地が町の7割近い面積を占めており、現在も放射線量が強い。吉沢さんは話す。「自分の牧場の牛は殺処分させなかった。市場に出せないと判っていても殺させなかった。原発事故の悲惨な現状を示す証拠だし、人様が食ってもらえないからと言って、はいさようならとは行かない。まずは10年間、『希望の牧場』として頑張ってみている。」

吉沢正巳さん 牧場小屋で
2019.3.14

牛は牧草ロール【約300kg、3000円】を一日8~10個たべるそうで、経費は3万円ほどになる

牧場内の看板 2019.3.14

牧場入口の闘争の証拠品

 

吉沢さんは国内だけでなく、海外の原発推進国であるフランス等に出かけて原発廃止を訴えている。渋谷では、「東京の皆さんは、原発事故で辛い思いをしている福島で発電した電気を今でも使っている。原発を本気で推進するなら、東京に原発を作るべき。大震災は今度は関東地方や東南海地方に来るといわれている。その備えを考えるなら原発を初めとする防災対策をもっと東京の皆さんは真剣に考えなければいけない。そんな大切な時に、復興五輪とか言ってお祝いする気分にはどうしても福島の人はなれない。」と訴えたら、多くの人は嫌な顔して通り過ぎて行ったが、少ない数だがカンパして頑張ってくれと激励も受けたとか。毎月の牛の餌代が90万円近く掛かるという。多くの善意のカンパでかろうじて牛の命を繋いでいるが、先は全く見えないという。本当に希望を持てる牧場なのか、何時も反問しながら朝を迎えているという。

 

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