医療・保健・福祉から「われもこうの会」を考える

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今年で57回になる農村医学夏季大学講座が昨日(22日)までの2日間、佐久総合病院ホールで500人近い参加者を集めて開かれました。この講座は医療・保健・福祉に従事する多くの関係者や、これらを求める一般市民を対象として開かれており、毎年時の話題となっているテーマを中心に講演やシンポジウムが企画されています。特に初日には、佐久総合病院の開設時から中心的に活躍してきた若月俊一氏の志を引き継いで活動している者を顕彰する「若月賞」の授賞式と記念講演が開催されており、多くの参加者があります。今回、若月賞を受賞した和田浄史氏(川崎協同病院外科部長)と永田久美子氏(認知症介護研究・研修東京センター研究部部長)のお二人の講演を聞く機会があり、そこから考えさせられた「われもこうの会」について少し触れたいと思います。(信濃毎日新聞7月22日33面参照)

 

和田氏は、平成10年に川崎協同病院外科に勤務しましたが、間もなくして気管チューブ抜去・薬物投与死亡事件(川崎協同病院事件)に遭遇します。直接事件の当事者ではなかったものの、主治医が殺人罪(最高裁判決懲役1年6ヶ月/執行猶予3年)に問われ、多くの外科医が次々と退職していく中で一人病院に残り、今日まで医療の信頼回復を誓って看護師や地域市民などの支えの中で頑張ってきています。その中で意識して来たことは、患者さんが抱えている課題(病気以外の家族環境や金銭面など多様)を中心として、行政・医療機関(医師、事務、薬剤師、看護師など)・患者家族などの多くの関係者の多元的な連携を考えたチーム力を発揮する事だそうです。単なる医学的な治療行為に限定するだけでなく、患者さんが抱える多くの課題を解決するために取巻く関係者の総合力をどう発揮するかを考える医師でありたいと話していました。自分の能力の限界と、周辺関係者の理解の低さを嘆きながらも、「負けてなるものか、撤退してなるものか」と悔しさの中から課題解決に涙を流して立ち向かって来たそうですが、その話を聞いている女性参加者の中には感極まり、もらい泣きしてしまう人の嗚咽が会場のあちらこちらから聞かれました。

 

また永田氏は、看護学校時代から老人医療に関心を持ち、多くのお年寄りに会って話を聞いたそうです。そして贅沢は言わないがと、素朴な願いの実現に向けて今日言われるグループホームの原点を作ることに腐心したそうです。本人も家族も職員も地域の人も、楽しく解放される場を目指してこれまでやって来ているとの事です。昨今、国が補助制度化しグループホームがたくさん出来て来たものの、箱物だけが急増し支える人々の質的な向上を忘れがちである危機感を持っているとの事。また2000年の介護保険制度スタート当初では余り意識されていなかった痴呆性高齢者の存在が最近急速にクローズアップされ、医学、看護、介護、心理、社会等の多様な専門分野の研究者と在宅・施設・グループホームの職員が集まったワーキンググループとが共同して、ケアのあり方と具体策を論議し、本人が自分らしく暮らしていくためのケアプランを生み出す一連のシートを工夫したそうです(センター方式)。最近の認知症への取組は、隠しておきたいという姿勢から反転して、認知症の一人ひとりが、自分の体験・生き方を見つめ、語り合い、発信する機会を作り、本人同士が出会い、語り合い、希望を見出して生きていくチャンスを作るような時代になって来ていることを強調していました。

 

われもこう会員の平均年齢が00歳の今日、誰かがこれから、病気や認知症にかかる事は十分に考えられます。また、新しい会員として参加しようとする方が、病気の快方に向けてや認知症の自覚の中で、新しい生甲斐を求めて見える方もいるかも知れません。そんな時には、お互い支えあう気持ちを持って、その人に遠慮することなくお互いを理解しあう努力が要るのではないでしょうか。とりわけ、認知症は初期段階での対応が重要とのことです。不必要に恐れることなく、その人がその人らしく生きていくための当事者の心構えと、取巻く友人等の心構えについて組織としても時に立ち止まって考えておく必要が有るのではないでしょうか。

 

ー美しい草花を咲かせるために炎天下、額に汗するの地道な努力を惜しまず、お互い人間として尊重しあう寛大な心を持った「われもこうの会」会員の皆様にー

 

若月賞受賞者
右:和田浄史氏
左:永田久美子氏

受講する参加者

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